知識は十分身につけた!!
今はそれを早く試したい!
そして今度こそ勝つ!!


第六話 再戦 ―retry―


息を大きく・・・

机上の学問に慣れすぎてしまったのか・・・

確実にパソコンの息の根を止めることのできる工具に

私自身が酔っているのか・・・

それとも・・・未知の分野への挑戦に臆しているのか・・・

もう一度・・・息を大きく・・・


勉強の末、専門用語への恐怖を拭い去った私はハードディスクを購入した。

そして自宅に帰っていよいよ取り付けようとしたのだが、

いざ取り付けようとしたら身体が動かなくなった。

「医大を卒業したばかりの新人医師が始めての大手術でメスを手にしたまま硬直している」

このときの私の心理状態はそれに近いものがあっただろう。

頭では克服できたつもりなのだが、恐怖の記憶はまだ身体に焼き付けられていたため

動かない・・・と言うよりは、動けない、と言ったほうが正しいだろう。

「静かなる戦い」。どこから取り掛かるか、

隙をうかがっていた(正確には迷っていた、だが・・・)ため

この言葉がよく似合ったことだろう。


何度目かわからない深呼吸を終えた後、私は作業に取り掛かった。

まずは拡張スロットのカバーの取り外し。

止めてあるネジをすべて外すと、カバーはあっけなく外れた。

次にインターフェースボードを差し込んだ。

重い手ごたえとともにインターフェースボードは差し込まれ、ネジで固定された。

インターフェースボードを差し込んだらハードディスク本体と

ターミネータを取り付けてとりあえず接続は完了した。

あとはフォーマットするだけである。

工具を置いて一休みしたとたん全身から汗が噴き出した。

時間にすれば30分にも満たなかったのだが、その短期間にそこまで消耗していたのだろうか。


その後のことはよく覚えていない。

取り付けだけでほとんどの精神力を使い果たしてしまったせいか、

それとも思っていたよりもフォーマットがあっさりとできてしまい、

そのあとのインストールも難なくできてしまい拍子抜けしてしまったためか・・・

ともかく気がついたときにはもうハードディスクが使える状態になっていた。


ハードディスクを取り付けたら、しっかり作動するかどうか確認する必要があるのだが、

その確認の方法は・・・










やっぱりゲームだった・・・(しかも○リンセス○ーカー2)










フロッピー交換の手間から開放され、データの読み込みにも時間がかからなくなったため

とても満足していた。

しかしそれでも「パソコン=ゲーム機」の間違った認識は変わることはなかった。

変わったとしても「いろいろと改造できるゲーム機」と言う程度で、

他にも文書の作成や表計算ができる、という事実を知るまで

あと数年の年月を待たねばならなかった・・・



第一部「目覚め」−完−




次回予告 ハードディスクとの激戦から数年後・・・ 新たなる出会いによって自分の限界を思い知らされる!! 第二部ではシリアス路線ではなくギャグ路線に戻れるようがんばってみます(←弱気) 新たな展開が待っている 第七話「検索 ―search―」! 夏休みは交通事故と水難事故に気をつけながら待て!!



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